身中垂直線与二四点

からだの中の垂直線と、二点、四点

 

からだの中の垂直線(身中垂直線)は、一本の【意識線】であり、それは、首から両脚の間に垂直に降りている。太極拳では、からだを立てて、そして偏ったり、寄り掛かったりはしないで、すべてこの身中垂直線で推し量り、実現するのである。太極拳のいかなる動作も身中垂直線の移動によって、身体の重心の落下点が確定し、また、躯幹と両腿の動作上の上下相髄、「平送腰胯」と「協調一致」も可能となるのである。身中垂直線は、養生方面では、老人性の猫背を予防し、また、胸や背中の不具合の調整に役立つ。

 

歩法の進退変換が、身中垂直線の移動により完成しているならば、両腿には何ら荷重感がない。

 

両脚の間を、全部で、五つの点〔1~5〕で分けることができる。1の点と5の点は、前後の脚の踝(くるぶし)とかかとの間に位置する。2の点は、前脚の踝の内側、4の点は、後脚の踝の内側にごくごく近く、3の点は、即ち両脚のまん中である。

 

けいこの際に、身中垂直線は、終始2の点と4の点の間で移動するよう注意する。どんな動作をする場合も、1や5の点には落とさない。

 

2の点と4の点は、身中垂直線の下の端っこの落下点である。身中垂直線が2の点から3の点を通って、4の点に到るときにごくごく自然に虚歩になるのである。逆に、身中垂直線が4の点から3の点を通って、2の点に到れば、まったく自然に弓歩になるのである。

 

身中垂直線を運用し、2点から4点での運行をすれば、運行路線は短くなり、弓歩、虚歩の変換がすばやく、霊活になるだけでなく、思いのままに、「平送腰胯、尾閭垂」という行拳の要領を実現できるのである。

 

もしも、弓歩になるときに、身中垂直線を1の点に落とすならば、必然的に前腿の膝がしらがつま先を超えることとなり、その結果、身形は前傾し、前腿の負荷が大きく、重たくなる。

 

虚歩になる時も同様で、もしも、身中垂直線を5の点に落とすならば、必然的に体重が後腿かかとに乗りかかってしまい、結果、後腿に負荷が重たくかかり、そして緊張しにぶく滞ってしまうので、変換がスムーズでなくなるのである。

 

けいこの際に、2点・4点を運用せよ、といったけれども、これは「歩幅を狭くせよ」、とイコールではなく、ただただ、下半身の操作が活発で敏捷で、そして全然疲れないものにすることが可能だからである。反対に、身中垂直線を1点・5点に落とすならば、それは、単に無意味に歩幅が大きくなるだけであって、下半身の操作が滞り、運転が霊活でなくなり、変換の過程がやたら長くなり、そして「歩随身換」ができなくなってしまうのである。

 

 

身中垂直線と2点・4点の運用次第で「拳勢」が正しいものかどうかが決まってしまうのである。だから、拳術の演技写真を手にしてみて、そこに身中垂直線の落下点を引いて、両脚の立ち位置関係を精査してみれば、上の説が、決して形式ではない、ということがわかっていただけるだろう。